赤ラベルFG

1966年10月
日本初のオリジナルギターのライトグリーンラベルFG-180とFG-150が発売される。(後に赤ラベルに変更される。二つの違いはボディの形状の違いだけで180がウエスタン[マーチンで言うドレッドノート]150がフォーク[マーチンで言うOOO]タイプ)モデル名のFGはフォークギターの頭文字から取られた。
定価はモデル数字をほぼ百倍した価格になっていてFG-180は当時の初任給に値したと資料に残されている。(価格を百倍にする流れはブラックラベルまで続く。)
ヘッドのロゴ字体にはクラシックギターに使っていたエクステンド(平体)を使用、見た目には少し潰れた感じの字体で、エクステンドは150と180にしか使われていない。

Martinなどの外国製のギターを意識してか発売当時のFGはボディが全て単板で作られているが3ヶ月後に全て合板になる。(理由は記録がなく不明だがおそらくコストの問題と思われる。ボディが単板で作られたとヤマハの内部資料には記載されているが現存するものは一度も確認されておらずヤマハ自体も単板FGを独自に探しているようである。記録にある単板モデルは極少数生産され、全てがプロの手に渡り他の人に渡ることなく姿を消した幻のギターと思われる。)

1967年4月
FG-110、FG-230が発売。ヘッドのYAMAHAロゴは縦長のコンデンツ(長体)が採用される。(コンデンツは今のギターでも使用している字体)この二種類は赤ラベルで発売するが180、150はまだライトグリーンで仕様の変化などはない。230は初の12弦ギターで仕様は180とほぼ同じ、110は150の安価版(スチューデントモデル)で、もっと安いものをとユーザーからの要望により販売され、それに伴い使用木材やデザインが変化している。

ここで登場した赤ラベルとは日本初のオリジナルデザインギターのモデルの愛称。愛称の由来はボディ内に貼られていたラベルが赤かったためで日本初のオリジナルデザインギターだったが非常に出来がよく、当時としても高い人気を誇っていた。発売から50年たった今でも伝説と呼ばれるほどの知名度があり12種類あるモデルの多くは現在でも定価を上回った価格で取引されています。
しかし赤ラベルは5年ほどマイナーチェンジをしながら販売されていたため後期になるにつれて生産数の増加などの理由で完成度にばらつきが出るようになったため出来がよく、伝説と言われているのは1968年くらいまでに作られた180と150を表しているように思います。

コンデンツロゴの1968年製FG-110

1968年5月
ライトグリーンラベルがなくなり赤ラベルに変更。150、180ヘッドロゴがコンデンツ(長体)に変更。

実際は5月を境に切り替わったわけではなく5月頃からパーツ在庫が無くなり次第変えていったと推測されます。

エクステンドロゴ赤ラベルFG-180前期
1968年?月(5月以降)
つり鐘型トラストロッドカバーがストレート型(三角型)に少しずつ変更。(69年3月までに全て完了)

エンドピンがカバ材と言う木材から一回り小さいプラスチックに変更。

1969年?月(3月よりちょっと前?)
FG-140が発売。
140は180の安価版で使用木材とデザインが変更されています。カタログ上は3月となっていますが実際は3月より前に流通していたようです。
1969年3月
ヘッドのYAMAHAロゴが音叉マークに、ポジションマークが5mmから3mmに変更。(ロゴは手作業で一字ずつ貼り付けていたために間隔などにバラつきがあり、それを防ぐために一度で貼れる音叉マークになったと思われます。)
この頃にFGの輸出が始まる。対象機種は75、110、140、150、180、300でFG-75とFG-300は輸出専用機種のため日本での販売はなくカタログなどにも載っていない。輸出機のシリアルナンバーは頭にアルファベットTが入り、ヘッドの裏にmade in Japanと書いてあり、ヘッドロゴはすべてYAMAHAロゴに変わる。(輸出する際音叉マークでは会社名が浸透しない恐れがあるためYAMAHAロゴに変更したと思われる。)

音叉マークのFG-180後期

FG-140

1969年5月
FG-350、FG-500、FG-550が発売。350はストロークプレイを重視し初のヘビィーゲージ標準装備ギター、500は当時の生産ラインで作れる最高レベルのギターで高級なハカランダをボディ材に使用し、さらにトップとバックはFGでは初の単板だった。550は500の12弦版。
1971年12月

FG-220、FG-280発売。180よりも高級な木材を使用しているという触れ込みだがカタログ上の仕様は180、220、280ともに変わらず木材に高級と付いているだけで単板ではないが普通の合板よりはグレードの高い木材を使用している。外見はボディ、ヘッドなどに白いセルが巻いてあるなどの装飾がしてあり高級感は出ている。

1972年5月
赤ラベルFGの全廃盤。6月からは新しくグリーンラベルFGが発売。

その他FGへ

復刻赤ラベルの紹介

1995年10月
ヤマハフォークギター発売30周年を記念してFG-180を500本FG-1500(皮ラベル)を30本限定で発売。仕様はFG-180は当時と全く同じで価格は8万5000円、FG-1500はデザインやトップを変えて60万円。

2000年2月
現代赤ラベルとしてFG-512SJ、FGX-512SJが発売。トップは単板であった。FGXはFG-512SJにピックアップがついているだけで他の仕様は同じ

FG-512SJ

2000年11月
FS-500SJ発売。FG-512SJのフォークボディ版

2002年3月
ヤマハフォークギターの集大成として赤ラベルのThe FGを発売。市販FGでは唯一の高級機種でオール単板仕様。FG-180の現代版でペグはクルーソンを使い、The FGのためだけにブリッジピン、エンドピンが共にエボニーでナット、サドルも牛骨が標準装備されている。とにかく軽く音がいい。 後に材料の高騰により価格が上昇した。

2002年4月
FG-522SJ発売。FG-512SJのブラック塗装版でボディの縁取りなどが白い。岩沢さんのFG-customに見た目が一番近い。

2016年3月
現代版のFG-180のFG180-50THが限定発売される。

FG-180の見た目のままオール単板仕様でライトグリーンラベルのエクステンドロゴに初期赤ラベルを再現したラベルなどマニアックな仕様になっている。

2019年5月
Red Labelと名前を変えてFG5、FG3、FGX5、FGX3、FS5、FS3、FSX5、FSX3現行販売。音叉マークのFG自体数十年ぶりの販売でFG-180とFG-150をリメイクしたような外観をしている。最新の技術を使い現代にあった音に仕上げ、塗装がグロス仕上げにしてあるなど昔との差別化が伺える。ラベルはFG-180のデザインを四角にしたようなデザインをしている。FG5は国産、FG3は外国産とされるが価格以外で使用木材やスペックなど違いはみられない。

赤ラベルの希少種

赤ラベルは初めてのオリジナルアコースティックギターだったためかなりの回数マイナーチェンジをしています。(赤ラベル以降マイナーチェンジはない)
そのため同じモデルでも作られた時期なより見た目が違うことがよくあります。ここではあるはずのないモデルをまとめました。

FG-150、FG-180
エクステンドロゴの赤ラベル
エクステンドロゴはライトグリーンラベルにしか使われていません。エンドピンもカバ材が使われているためライトグリーンラベルにラベルだけ赤ラベルをつけたものと思われます。

音叉ロゴなのにポジションマークが5mmドット

音叉ロゴはポジションマークと同時に変更されたはずなので音叉ロゴであれば本来は3mmドットのはず。逆に3mmドットでYAMAHAロゴのFG-150、FG-180は存在しない。

FG-110
つり鐘型ロッドカバーなのにポジションマークが3mmドット

ロッドカバーの後にポジションマークが変更されているはず。

YAMAHAロゴでポジションマークが3mmドット

YAMAHAロゴはポジションマークと同時に変更されたはずなのでYAMAHAロゴであれば本来は5mmドットのはず。

FG-140
YAMAHAロゴ
FG-140自体YAMAHAロゴは存在しないはずですが輸出モデルの場合はYAMAHAロゴに変更される。

FG-500
YAMAHAロゴ
FG-500自体YAMAHAロゴは存在しないはずですが輸出モデルの場合はYAMAHAロゴに変更される。発見した個体はヘッドの裏にmade in Japanとあることから輸出機と思われる。

幻のFG探し

FG通ならばだれもが探している幻の単板ライトグリーンラベルFGをシリアルを使い探そうとすると本に載っている52XXXXのライトグリーンラベルは単板ではありません。私が確認した49XXXXのライトグリーンラベルも単板ではありませんでした。単板ライトグリーンラベルは資料によると3ヶ月ほど生産されたようですが私が長い間探して一本も確認していません。
しかし幻のライトグリーンラベルは制作者自身が存在を公言しているので本当に数本程度の極少数しか作っていないようです。YAMAHAに単板ライトグリーンラベルが残っておらずYAMAHA自身も探しているようなので極少数のプロに試作品として渡されたと思われます。

試作機と思われる謎のライトグリーンラベル
F-90
スペック自体は180と同等を思われる。

モデルのまとめ
150、180、230(12弦)、220、280
マホガニーを使ったモデル、150のみフォークボディ。220、280はマイナーチェンジが全くない。

110、140
150と180安価版で使用木材とデザインに変更がある。

75、300
輸出限定、75はクラシックギターのようなボディ、300はウエスタンボディにピックガードがハミングバードのような装飾があり二機種ともに見た目が個性的。

350、500、550(12弦)
ローズを使ったモデル。マイナーチェンジが全くなく、どの時代でも見た目、仕様が同じ。稀に輸出モデルもある。

赤ラベルスペック別シリアル

赤ラベルのみにある特徴としてマイナーチェンジがあります。このマイナーチェンジにより製造年とシリアルが変わりシリアルがわかればだいたいのスペックがわかります。

初期のヤマハのシリアルはスタンプで手押ししていたためカスレやズレなどの不鮮明な物があります。また劣化によりインクが薄くなったり汚れなどで6や8が0に見えたりすることがよくあります。

赤ラベル時期のシリアルは全て出来た番号順になっています。偶然にも頭数が西暦一桁と一致すること多いですが間違いなく番号順のシリアルです。

詳しくはこちらへシリアル解読

変更年月
確認機種
変更点
シリアル

1966.10(S41)
FG-150、FG-180(以降FG-省略)
ライトグリーンラベル
6桁49XXXX~62XXXX

1968.4?(S43)
150、180、110
赤ラベル(以降赤ラベル)
平体ロゴ
6桁59XXXX~622XXX

1968.5(S43)
150、180、110、230
長体ロゴ(以降長体ロゴ)
6桁61XXXX~87XXXX

1968.6?(S43)
150、180、230、140、110
三角型トラスロッドカバー(以降三角型)
エンドピンプラスチック(以降エンドピンプラ)
6桁80XXXX~952XXX

1969.3(S44)
150、180、110、140、230
音叉マークロゴ
ポジションマーク3ミリドット
最終変更で以降変更はない
6桁91XXXX~99XXXX

150、180、110、350
7桁107XXXX~152XXXX

150、180、110、140、230、220、280
8桁100XXXXX~205XXXXX